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・自己紹介
・インド古典音楽について
​・打楽器タブラについて
紹介

・自己紹介

 

 学生の頃からアマチュアバンドでベースやパーカッションを演奏。

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 脱サラした後、楽器とともに音楽放浪の旅へ出発。数年を過ごしたオーストラリア、ニュージーランドでは車に機材を載せて木管楽器ディジュリドゥやアフリカの打楽器ジャンベで民族楽器の路上パフォーマンスをしながら旅を続ける。

 旅の途中、地元ヒッピー達とのバンド活動、農家バイトやサーフィン、森林保護活動、原住民コミュニティに訪問したり、野外フェスRainbow Serpent Festival、Luminate festival、Glitch festなど様々なイベントで演奏。地元新聞やラジオ、CATVに出演。

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 2009年、皆既日食を観測しに訪れたインドで伝統打楽器タブラと出会う。バラナシ流派のPt.マニク・ラル・ミシュラ氏、ジャイデブ・ムッカルジ氏にタブラの奏法とインド古典ヒンドゥスターニ音楽の理論を師事。以後、師の元へ通い教えを深める。2019年の渡印では現地コンサートでタブラソロ出演。

 旅の途中、ヒマラヤ山脈のマナスル山麓に位置する音楽家一族ガンダルヴァたちの村に滞在し、電気や水道もなく自給自足を営む素朴な村で稲刈りや家畜の世話を手伝い実生活からヒンドゥ讃美歌のキルタンやバジャン、伝統民謡ドゥンの伴奏を修練。

 ライブハウス、野外フェス、まつりやマルシェ、寺社仏閣、カフェレストランなどで演奏し、民族楽器ユニットや様々なジャンルのアーティストとのコラボも積極的におこなう。これまで国内各地にくわえオーストラリア、ニュージーランド、トルコ、インド、タイなどで演奏。

 

 自己追及と真理探究をライフワークにタブラの魅力を広めるためにボーダレスに活動中。大阪ひらかた市在住。

​ 好きなカレーはジャガイモとカリフラワーがゴロゴロしてる辛口。

・インド古典音楽について

 インド古典音楽はメロディや旋律を旨とする「ラーガ」とリズム理論体系の「ターラ」から成り立っています。非常に即興性の強い音楽で インドの宗教や宇宙観、文化や生活環境と密接な関係を持ち  世界の多様な音楽のなかでも類を見ない独特な様式で構成されています。

 3000年以上前に編纂されたといわれる古代インドのバラモン教の聖典のひとつサマ・ヴェーダにラーガとターラの記述があることから 仏教の開祖釈尊ゴータマ・シッダルタの時代からすでにその音楽様式は確立されていました。

 ヒンドゥー教の核となるウパニシャッド哲学の盛隆と広域にわたる伝搬、また西方ペルシャ地方からのムスリム文化の影響を色濃く受けながら その演奏技術や理論体系は変容を続け いつしか膨大な学問となりました。

使用される専門用語もヒンズー語をはじめ古代インドのサンスクリット、パーリ語、ウルドゥ語と多岐にわたり、その独特な伝承法は古代から変わらず  西洋音楽のように譜面を用いず 師から弟子たちへ 口伝でもって伝えられます。

 

 長い歴史の中で伝承者不足で失われてしまった楽曲や楽器そのものもあり、 またRaga Deepakのように意図的に封印されてしまった例もあります。逆に 近年に新しく創造されたものもあり 伝統的な古典芸能ではあるものの  各時代の奏者たちによってアップデートを繰り返しながら  今もなお新しい表現方法が試案されています。

 インド古典音楽の全体のテーマとして  輪廻転生からの解脱(モクシャ)を表現しているといわれ、ニルヴァーナに達するための導線や手段としての側面から「音のヨーガ」とも称されます。そのため現地ではミュージシャンは旧カースト制度の僧侶階級であるブラーミンが多数を占め、寺院での演奏会も頻繁におこなわれています。

 

 インド古典音楽では様々な楽器が演奏されます。代表的な旋律楽器のひとつにシタールという多弦楽器があります。ビートルズのジョージ・ハリソンがノルウェーの森などの楽曲の中で演奏し 世界的に注目を集めました。またクリシュナ神のシンボルでもある横笛バンスリー、日本の琵琶の原型といわれるサロード、キールタンやバジャンでは欠かせない鍵盤楽器のハルモニウムがあり、昨今のインドのコンサートではバイオリンやギターなどインド原産ではない楽器のインド古典音楽演奏も散見されるようになりました。一方でリズム楽器もバリエーションに富み、現代インドで主流のタブラをはじめ、タブラの原型となった両面太鼓パカーワジ、同じく両面太鼓で南インドで多く見られるムリダンガム、右手にスティックをもって演奏するドーラク、陶器のツボの形をしたガタムなどがあり、これらの音色はボリウッド映画でも採用され カレー屋さんでも耳にする機会があります。

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 演奏はまず「アーラープ」と呼ばれるメロディ(ラーガ)奏者の独奏からはじまります。宇宙空間を漂うような無拍子のなかで非常にゆっくりしたムードから一音一音が丁寧に紡がれていき、ラーガの輪郭が徐々に姿を現します。主奏者によってラーガの物語がひとしきり奏でられると 次はガットと呼ばれる合奏パートからリズム(ターラ)が刻まれます。ビランビット(低速)からはじまり、マディヤ(中速)、ドゥルット(高速)へすすみ、演奏者たちはラーガとターラの原則の中で 降りてくるその場限りの即興表現をおこない、楽曲はスピードを増しながら展開していきます。やがて人力の限界にまで近づき、臨界を迎えた楽曲はティハイという定型パターンを用いてカタルシスを迎えます。

 即興表現ではあるものの 守るべきルールやセオリーがあるため たとえ初見の奏者同士であったとしてもキレキレの楽曲アンサンブルが成り立ってしまうのがインド古典音楽の特徴のひとつでもあり 大きな見どころでもあります。現地コンサートでは演奏者が素晴らしい演奏をした際には 客席から「キャバーテ!(Kya baat hai )」という声が飛び出します。ヒンズー語で、「なんてこった!」「すごい!」といった意味の言葉ですが これを読んでくれているあなたがインド古典音楽の演奏会で素晴らしい演奏を見た際には ぜひ「キャバテ!」と言ってあげてください。

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・​打楽器タブラについて

​ タブラは両面太鼓パカーワジから派生し300年ほど前から今の形態になったといわれています。


パカーワジはインド古典音楽の中でも最も古い歴史をもつドゥルパッド声楽の伴奏打楽器として現在でも各地で演奏され、像の頭を持つガネーシュ神がパワーワジを演奏している絵画がよく見られます。丸太をくり抜いて筒状になったボディの両端にヤギの皮が張られたものをあぐらをかいた状態で両手を使って横から叩いて演奏します。ある時 演奏の出来に激高した演奏者がパカーワジを地面に投げつけ、ふたつに割れてしまったボディをそれぞれの手で演奏したのがタブラの始まりとされています。

 

 高音を出す右手(ダヤン、ダヒナ)がすべて木製である事に対し、低音を担う左手(バヤン、ダッガ)は銅製やスチール、陶器で作られたものもあります。基本的には上部16か所、下部16か所にヒモを通しテンションをかけて打面皮を張り、グッリ(木製コマ)をかませることでさらにテンションを稼ぎます。チューニングはハトリと呼ばれる専用のハンマーを使い 主奏者の求めるキーに厳格に合わせる必要があります。打面にある特徴的な黒い丸はスヤーヒといい、鉄粉や米を混ぜ合わせて幾重にも塗付けられることによって 打撃音に豊かな倍音効果やサステイン(残音)を与えます。このスヤーヒの製法は工房の職人によって代々受け継がれ、ボディの形状やバッティ(革ひも)、プリ(打面皮にも)地域ごとに特色があり、タブラは進化を続けながら現在ではインド音楽におけるパーカッションの代表格までポピュラーになりました。

 世界一難しい打楽器とも称されることもあるタブラは、正しい音を出すことが容易でなく、きれいな音を出すことが初心者にとって最大の壁となります。楽譜の代わりにボルという専用言語でリリックを暗記し、それを手を使って発音していくスタイルはインドならでは。初心者はまずは指の使い方、叩くポイントなどを体に覚えさせるのが最重要課題となります。指の使い方やボルの発音は流派によって異なりますが、流派同士の派生関係もあり、共通している部分も多くあります。地域やプレイスタイルで分類される代表的な6流派のデリー、ラクノウ、アジュラーラ、ファルカバード、パンジャーブ、バラナシとそれぞれに異なった特色をもつ技術体系が存在しますが、昨今ではYOUTUBEやSNSの影響もあり、流派の壁はおろかインド古典音楽の枠を越えて演奏するいわゆるアルティメットスタイルをとる演奏者も増えてきています。

 

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